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神経細胞2
種類と分布
一般的分類
以下は神経細胞の形態による分類であり、細胞の機能が特定されていない場合の一般的分類である。 あちこちの神経細胞が同じ名前で呼ばれるが、基本的に形態以外の共通点は考慮されていない。 しかし局所的には形態の違い、すなわち軸索の伸びる先や樹状突起の持つシナプス数は機能の違いを反映していると仮定した研究が多い。
錐体細胞
ピラミッド状に見える細胞。
星状細胞
樹状突起が四方八方に伸び、トゲトゲの球形に見える細胞。
顆粒細胞
樹状突起が少なく粒状に見える細胞。
大脳皮質においては錐体細胞は皮質領野間や皮質と核をつなぐ興奮性の細胞であり、星状細胞は領野内での抑制性および興奮性の介在神経細胞と考えられている。 これら介在神経細胞は形態から細かく数十種類に分類されることがある。
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特徴的分類
以下は特定の部位に存在し、特徴的な機能・形態を持つ分類である。
網膜神経節細胞
網膜に細胞体があり、軸索が束となって視神経を形成している細胞
プルキンエ細胞
小脳のプルキンエ細胞層に見られる、うちわ型の樹状突起を持つ細胞。 うちわを重ねるように密集して存在し、さらにプルキンエ細胞の重なりを貫くように平行繊維が伸びてシナプスを形成しており、システマティックな構造を形成している。
歴史
19世紀後半、中枢神経をはじめとした神経系が網状構造をとることまでは知られていたが、ゴルジらは神経繊維は末端でたがいに途切れること無く連続して網を形成しているとする網状説を主張し、ラモン・イ・カハールらの神経線維も細胞の集合であるとするニューロン説と対立した。 1906年のノーベル生理学・医学賞はゴルジとカハールが同時受賞し、両者はまったく正反対の立場で受賞記念講演を行っている。 なお、ゴルジ染色法によりニューロン説が有力となり、電子顕微鏡や分子設計による染色法の発達に伴って神経の細胞としての微小構造や特性の解明が急速に進んだ。
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錐体細胞 (神経細胞)
錐体細胞(すいたいさいぼう、pyramidal cell)は、大脳皮質と海馬に存在する主要な興奮性の神経細胞(ニューロン)である。 細胞体がいくらか長く伸びた錐形をしているためこの名がある。
皮質でも海馬でも錐形の頂点方向が表面方向を向いている。 この錐形の頂点からは 樹状突起 (en:dendrite) として尖端樹状突起 ( en:apical dendrite) が延び、大脳皮質では主として I 層に比較的長い枝を広げる。 錐形の裾野の部分からはいくつかの基底樹状突起 (en:basal dendrite) が延び、主として周囲の他の神経細胞とのネットワークを構成している。 円錐の頂点の反対側から軸索が延び、大脳ではこれは皮質を抜け出し白質を通じミエリン鞘をまとって他の領野や深層の核へと神経パルスを伝達する。 樹状突起にはすきまなく棘(きょく)が存在し、他のニューロンとシナプス結合を構成している。 自らの軸索の先のシナプスからは神経伝達物質としてグルタミン酸を放出する興奮性細胞であり、他の細胞を脱分極させる。
大脳皮質の神経細胞のうち 80 % ほどが錐体細胞であり、 平均的には皮質 1 mm3 あたりヒトでおよそ 1 万、ラットで 10 万の錐体細胞が存在する。 海馬では、アンモン角(CA3, CA1 領域)の主要な神経細胞である。 ヒトの錐体細胞の細胞体は典型的には 10 μm から 50 μm ほどである。 ベッツ細胞とも呼ばれる一次運動野の V 層の錐体細胞は特に大きく、ヒトでは細胞体が 100 μm になる。
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シナプス
シナプス(Synapse)は、神経細胞間あるいは筋繊維(筋線維)、ないし神経細胞と他種細胞間に形成される、シグナル伝達などの神経活動に関わる接合部位とその構造である。 化学シナプス(小胞シナプス)と電気シナプス(無小胞シナプス)、および両者が混在する混合シナプスに分類される。 シグナルを伝える方の細胞をシナプス前細胞、伝えられる方の細胞をシナプス後細胞という。
化学シナプス
化学シナプスとは、細胞間に神経伝達物質が放出され、それが受容体に結合することによって細胞間の情報伝達が行われるシナプスのことを指す。 化学シナプスは電気シナプスより広範に見られ、一般にシナプスとだけ言われるときはこちらを指すことが多い。
構造と機序
化学シナプスの基本的構造は、神経細胞の軸索の先端が他の細胞(神経細胞の樹状突起や筋線維)と20nm程度の隙間(シナプス間隙)を空けて、シナプス接着分子によって細胞接着している状態である。 シナプス間隙は模式図では強調されて大きな隙間をあけて描かれることが多いが、実際にはかなりべったりと接合している。
情報伝達は一方向に行われ、興奮がシナプスに達するとシナプス小胞が細胞膜に融合しシナプス間隙に神経伝達物質が放出される。 そして拡散した神経伝達物質がシナプス後細胞に存在する受容体に結合することで刺激が伝達されて行く。
化学シナプスにおける典型的な情報伝達機序は以下のように進む。
前シナプス細胞の軸索を活動電位が伝わり、末端にある膨らみであるシナプス小頭に到達する。
活動電位によりシナプス小頭の膜上に位置する電位依存性カルシウムイオンチャネルが開く。
するとカルシウムイオンがシナプス内に流入し、シナプス小胞が細胞膜に接して神経伝達物質が細胞外に開口放出される。
神経伝達物質はシナプス間隙を拡散し、後シナプス細胞の細胞膜上に分布する神経伝達物質受容体に結合する。
後シナプス細胞のイオンチャネルが開き、細胞膜内外の電位差が変化する。
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分類
化学シナプスは、興奮性シナプス、抑制性シナプス(シナプス後抑制性とも呼ばれる)、シナプス前抑制性の3つに分けられる。
興奮性シナプスは信号を受け取ると、興奮性シナプス後電位(EPSP; Excitatory PostSynaptic Potential)という信号を発生させる。 EPSPは神経細胞の分極状態が崩れる電位となるため、脱分極と呼ばれる。
抑制性シナプスは信号を受け取ると、抑制性シナプス後電位(IPSP; Inhibitory PostSynaptic Potential)という信号を発生させる。 IPSPは神経細胞の分極状態が強化される電位となるため、過分極と呼ばれる。
シナプス前抑制性は、興奮性シナプスが起こす興奮性シナプス後電位(EPSP)を減少させる働きを持つ。
可塑性
シナプスの活動状態などによってシナプスの伝達効率が変化するシナプス可塑性は、記憶や学習に重要な役割を持つと考えられている。
シナプス前細胞とシナプス後細胞がともに高頻度で連続発火すると、持続的なEPSPによりシナプスの伝達効率が増加する。 これを長期増強(LTP; Long Term Potentiation)という。 また、低頻度の発火や、抑制性シナプス後細胞の連続発火によるIPSPの持続によって、シナプスの伝達効率が低下する現象を長期抑圧(LTD; Long Term Depression)という。 近年では、シナプス前細胞とシナプス後細胞の発火時間差のみによっても結合強度に変化が見られることが分かっている。 これをスパイクタイミング依存シナプス可塑性(STDP; Spike Timing Dependent Plasticity)という。
また、一旦LTPやLTDを起こしたシナプスに対して適切な刺激を与えると、そのLTPやLTDが消失する事も知られており、それぞれ脱増強 (Depotentiation)、脱抑圧 (Dedepression) などと呼ばれる。
電気シナプス
電気シナプス(ギャップ結合)の模式図電気シナプスとは、細胞間がイオンなどを通過させる分子で接着され、細胞間に直接イオン電流が流れることによって細胞間のシグナル伝達が行われるシナプスのことを指す。 網膜の神経細胞間や心筋の筋繊維間などで広範に見られる。 化学シナプスのように方向づけられた伝達はできないが、それよりも高速な伝達が行われ、多くの細胞が協調して動作する現象を引き起こす。
電気シナプスは無脊椎動物の神経系では一般的にみられるが、長らく脊椎動物の中枢神経系では見出されておらず、脊椎動物の脳での神経伝達は化学シナプスのみによるものと考えられていた。 後になって海馬や大脳皮質の抑制性介在神経細胞の樹状突起間で発見され、重要な伝達手段となっていることが見出された。
構造と機序
電気シナプスは一般に、コネクソンというタンパク質6量体が2つの細胞の細胞膜を貫通し、ギャップ結合と呼ばれる細胞間結合を形成している構造を持つ。 コネクソンはコネキシンというタンパク質が六角形に配列した6量体構造で、中央に小孔が存在する。 この小孔はカルシウムイオン濃度によってコネクソンが変形することで開閉する。 小孔が開いているときには分子量が1000程度以下の分子を通過させ、濃度勾配圧などによって拡散する。 化学シナプスが数十 nm の間隔を持つのに対して、電気シナプスではコネクソンが両細胞膜の間隔を数 nm まで接近させており、極めて近接している。
逆援助はどうかかわっているのか。
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